ドリグ・ドリシュヤ・ヴィヴェーカ
『ドリグ・ドリシュヤ・ヴィヴェーカ』は、「見る者」と「見られるもの」の識別を通じて、自己の本性である純粋意識を明らかにするアドヴァイタ・ヴェーダーンタの古典である。同一の内容が『ヴァーキヤ・スダー(聖句の甘露)』の名でも伝わる。
眼は形を見る。心は眼の働きを知る。そして、その心の動きさえも見ているものがある。本書は、身体・感覚・心・思考・自我感などの「見られるもの」を順に見分け、決して対象にはならない観察者へと読者を導く。
ラマナ・マハルシとのつながり
本書は古来シャンカラの作と伝えられてきた一方、実際の作者については諸説がある。近代インドの聖者ラマナ・マハルシ(1879–1950)は本書を高く評価し、1901年頃にタミル語散文へと訳した。
外側の対象から眼へ、眼から心へ、心から観察者へと「見る者」を辿る本書の道筋は、ラマナ・マハルシが説いた自己探究の問いと深く響き合っている。
本文より(抜粋)
以下は全四十五詩節のうちの3節です。完全版では、サンスクリット原文・IAST転写・詩節ごとの解説・用語集を収録しています。
1.
形は見られるもの、
眼は見る者
その眼もまた見られるもの、
心はその見る者
心の働きは見られるもの、
それを見るのは観察者
観察者こそが見る者であり、
それ自身は決して見られない
2.
青・黄、
粗大・微細、
短・長など
眼はひとつのはたらきとして、
さまざまな形を区別して見る
10.
熟睡のとき、
自我が没するとき、
身体もまた、
意識を失う
夢は、
自我の変容である
覚醒のときも、
あらゆるものが、
同じく自我の変容である